第9章 からくりが工場を変えていく

まだ、“からくり”ではない

 あえて“設備革新”を掲げ、積極的にからくりを展開しているのがソニーイーエムシーエス千厩テック(岩手県)だ。2003年4月には、「セル型設備技術会」なるものを発足させている。
 ここでのからくりの定義は“無動力で複数の作業を一動作で行う設備”。極力、電力を使わず、たとえばレバーを押すだけで一連の作業が完了するようなものが理想である。
 取り組みは、以下の三つのタイプに分けて展開している。
 「セル設備」:“不良をつくれない”“流せない”、さらに小型・安価な自働き*1の設備。これには、たとえばチェッカー機能を搭載した靴箱ほどの大きさの超小型シールドボックスがある。携帯電話を中に置き、外部との電波の出入りを遮断し、送受信のテストを行う。エアシリンダー(空気で動かすピストン)1本で一連の動作がコントロールできる。また、不良と判定された場合にはボックスがロックされ、その携帯電話が取り出せない、不良を“流せない”仕組みとボックス内の部品の状態をアラームとランプで知らせる“自働き”も実現している。
 「主役治具」:難易度の高い作業を誰にでも正しく継続的に行える治具。前章で紹介した“傷防止カバー付きねじ締め受台”が、その一例。
 「正Tool」:作業を正しく行うためのツール。
 千厩テックのからくりは、現在70〜80種類に及んでいる。当初は外注したり市販のものを応用したりして使うこともあったが、現在は内製が基本となっている。設備メーカーは、設備をつくることが一義的な目的となっており、往々にしてそれが使われる作業を熟知していない場合が多いからである。

 「われわれはまだ、“からくり”には至っていません。“か”もしくは“ら”くらいのレベルですよ。現場の知恵は無限なんですから」
 プロダクト製造部門 部門長(当時)の高山金次郎による自工場のからくりに対する評価は厳しい。むろん、同じ製品をつくってはいないので一概に比較できるわけもないのだが、他工場と同等以上のレベルには達成しているという自負を持つ。だからこそ、常にもう一歩先をめざすということだ。成果はあがっている。からくりの考えを身に付けた若手が育ち、複合機能を持つ治具が次々つくられ始めている。



チェッカー機能付き超小型シールドボックス(千厩テック)


*1:自働き
「トヨタ生産方式」の用語。「じばたらき」と読む。「自働化」と同義。不良が次に流せないよう、製造設備に異常があれば自ら止まる仕組みとなっている。


記載されている内容は、2005年9月30日発行の冊子に準じています。

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